一般社団法人日韓経済協会

コラム・メッセージ

第10回「日韓交流おまつりin Seoul」を終えて

(協会報10月号より)

「日韓交流おまつり」実行委員
高杉 暢也
(SJC 元理事長・韓国富士ゼロックス元会長)

はじめに

たかが「おまつり」,されど「おまつり」,今年10回目を迎え,日韓文化交流のシンボルとなった「日韓交流おまつり」が9月13日,14日にCOEX会場で成功裏に終わりました。まずはご協賛およびご協力を賜わりましたSJCメンバー企業はじめ皆さんに心よりお礼申し上げます。

今年の「おまつり10年,夢のせて」のテーマには皆さんがそれぞれにいろいろな夢を抱かれていたと思います。第1回からこの「おまつり」にかかわっていた私個人としては,「両国の老若男女,特に若者がたくさん参加してくれたらいいな」という夢,「 長引く政治・外交問題解決のきっかけをつくれたらな」という夢,「韓国人の悲しみ・セウォル号惨事の鎮魂の意を表したいな」という夢,などなどたくさんの夢がありました。

結果として,これらの夢がかなえられ,来年以降への「おまつり」への夢が膨らみました。

前夜祭:「日韓交流おまつりin Seoul 10周年記念公演」

安倍首相,朴槿恵大統領の首脳会談もままならず日韓関係は戦後最悪の状況が続いています。加えてこの4月に起きたセウォル号事件は韓国人を悲嘆の底に落すばかりではなく,韓国経済にも大きな影響を与えました。10回目の記念すべき年なのに,取り巻く環境は大変厳しいものでした。逆境の中,テーマを「おまつり10年,夢のせて」として,10周年記念に相応しく前日9月13日(土)に前夜祭:「日韓交流おまつりin Seoul 10周年記念公演」を設け,14日(日)の本番の「おまつり」との2部構成としました。

前夜祭の第1部は「わが子を逝る母の詩」というタイトルで韓国伝統舞踊家・金利恵さんがセウォル号惨事の鎮魂を「解怨相生」の気持ちで厳かに舞い,深い感動を与えました。第2部は「日韓をつなぎ未来をつむぐピアノの調べ」というタイトルでNHK大河ドラマ「篤姫」(2008),「江~姫たちの戦国」(2011)の作曲で脚光を浴び,映画「冷静と情熱のあいだ」のサウンドトラックが韓国でも有名になったピアニスト・吉俣良さん,そしてドラマ「冬のソナタ」の「When the love falls」を作曲した韓国で人気の高い若手ピアニストYIRUMAさんがそれぞれソロ演奏し,その後,二人の共演で日韓の友情を奏でました。 吉俣良さんの伴奏者・真部裕さんのバイオリンの素晴らしい音色にも魅了されました。見るもの,聞くものすべてが素晴らしく,舞台に引き付けられた2時間でした。

おまつり:「おまつり10年,夢のせて」

今年も「不易流行」と「易地思之」の精神で3部構成からなるプログラムを組みました。

10周年祝賀公演では,世宗時代に音楽的に優れた功績を遺した蘭渓先生の末裔たちで構成された「永同蘭渓楽団」と風流ピアニストであり,神命の音を作る天才作曲家・イム‐ドンチャンの演奏で賑やかに幕を開けました。さらに「菊の会」の華やかな日本舞踊が披露され,「B.W.B」と「Khan & Moon」のロッキングダンスとメディア・パフォーマンスでオープニングとなりました。

第1部は「公式行事:10年の歩み」として開会式の後,10周年記念特別公演で「キムドクスサムルノベリ」と陸前高田市の「氷上共鳴会氷上太鼓」の合同公演で開会式を盛り上げました。

第2部「公演行事:共に楽しむ文化」では日韓を代表するおまつりがパフォーマンスを繰り広げました。日本からは徳島の貴重な伝統文化「阿波踊り」,沖縄市胡屋青年会に伝わる「胡屋エイサー」,日本の踊りの伝統を守り続ける「菊の会」,名前の通りアジア圏を中心に躍動するよさこいチーム「躍動」,全国大会14大会連続優勝に輝く「チアーリーディング」が,韓国からは韓国を代表する重要文化財指定の「安東伝統仮面劇」,原始的なエナジーと面白さを超え,美しい感動を与えてくれる韓国を代表するブラスカバンド「No.1 Korea」が出演しました。最後の日韓共演での「シェフコンサート」では,奇想天外な対決で寿司,ピザ,ヌードル,ビビンバなどをつくる個性あふれたパフォーマンスが繰り広げられました。

第3部「マダンノリ:分かち合う友情」では特別ゲストとしてピアニストの吉俣良さんと女優の上野樹里さんが出演しました。上野樹里さんは2011年にNHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国」で主役を演じ,今や名実ともに日本を代表する女優ですが,韓国でも「のだめカンタービレ最終楽章」に出演,人気が高まっています。続いて「J-POP」では世界のファンから愛されるシンガーソングライターのMayu Wakisaka(脇阪真由)と日本文化の愉しさを世界に広げつつあるYANAKIKU(ヤナキク:ヤナとキクの2人による日本の女性歌手グループ)が,そして「K-POP」では「冬のソナタ」で有名になりNHK紅白歌合戦にも出演したシンガーソングライター・Ryuと,日中韓3か国,6つのGENE(遺伝子)からなるアジアグローバルユニット・CROSS GENE(クロスジーン:男性6人組グループ)が心ゆくまで美声を奏でました。

クライマックスは日本を代表するおまつりのひとつである「青森ねぶた」が笛や太鼓を演奏する囃子方と跳人(ハネト),ねぶたの山車と一緒に熱気あふれる演技を繰り広げ,続く「秋田竿灯」が50キロを超す竿灯を自在に操る差し手のダイナミックな技の連続で観衆を魅了させました。その後,夜通しで輪になって踊るという韓国伝統の「珍島のカンガンスルレ」に続き,エネルギッシュなエレクトリックサムルノリの演奏に合わせてみんなが 日韓混合の「よさこいアリラン」を踊り,フィナーレは例年同様,日韓の出演者たちと観衆が一体となり,会場狭しとばかり,まさにビビン状態になり,「おまつり」の交流の輪(和)ができたのです。交流の歓喜は会場いっぱいに響き,両国の老若男女があたかも桜花と無窮花が咲き競うように踊り続けていました。

●おわりに

今年の「おまつり」には若い男女を中心に昨年を上回る約5万人の人々が集まり,「おまつり」は政治・外交問題とは縁遠いことを裏づけました。

当初,逆境の環境で協賛金集めも悲観的で,前夜祭の中止も脳裏をよぎったのですが,結果的には昨年を上回る協賛金をいただきました。改めて皆さんに感謝申し上げます。

今年の「おまつり」のハップニングは何といっても尹炳世外交部長官の「おまつり」への参加です。勿論,別所駐韓大使のご尽力によるところが大きいのですが,政治・外交を離れて「おまつり」に参加した意義は大変大きいものがあります。 来年は「日韓国交回復50周年」の記念すべき年となります。この「おまつり」がトンネルの中にある政治・外交上での日韓不協和音を解くきっかけとなれば,まさに両国の間にどんな悪天候があっても常に進むべき方向を教えてくれる灯台の光のような「日韓友好のシンボル」としての役割を果たすことになるのです。

引き続き,皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

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